押さえておきたいホームページ作成に関する5つの法律を解説

押さえておきたいホームページ作成に関する5つの法律を解説

公開日:2022/3/18
 最終更新日:2022/3/18

集客や商品販売にインターネットを活用することはいまや当たり前になっており、最近では初心者でも簡単にホームページを作成できるサービスも増えています。
そのためこれからホームページを自分で作成しようと考えている方も多いでしょう。

しかしホームページ作成やインターネットビジネスにおいては、いくつかの守らなければならない法律のルールが存在します。

今回はホームページを作成するうえで特に重要な5つの法律を取り上げ、法律の内容や気を付けなければならない点、そして違反した場合の罰則などについて解説します。
最低限の知識を押さえ、法律に従い正しくインターネットを活用しましょう。

(監修:奥・片山・佐藤法律事務所所属 弁護士 大江 弘之 ⇒ プロフィールはこちら

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01おさえておきたい5つの法律について解説

こちらで解説するのは、ホームページを作成するうえで特に重要となる以下の法律における最低限の知識です。

1.著作権
2.商標法
3.個人情報保護法
4.特定商取引法
5.薬機法

まずはそれぞれの法律が何のためにあり、どのような内容かを簡単に説明します。

具体的な規制内容、そして気を付けるべき点などについて解説するので、一つひとつチェックしていきましょう。

おさえておきたい5つの法律について解説

1-1.著作権

著作権は、思想または感情を創作的に表現したもの(著作物)を作った作者の権利を守る法律です。
インターネット上には音楽・動画・イラスト・写真・SNSの投稿といったさまざまな著作物がありますが、これらはすべて著作者に権利が帰属する著作物です。

そのため無断で自分のホームページ上に掲載すると、著作者から著作権違反で訴えられる可能性があります。
もっともこれには例外があり、以下のような場合には著作物を使用しても著作権違反にはなりません。

  • 「著作権フリー」 の著作物を(利用条件にしたがって)使用する
  • 著作物を適法に引用する

以上2点の著作権法違反にならない場合について、さらに詳しく解説します。

1.著作権フリーの著作物を使用する

著作権は、著作者の死後70年を経過するまで存在するとされていますので、亡くなってから70年経てば、そもそも著作権が存在しません。巷で昔の小説がタダで公開されていることがありますが、このように著作権が切れた作品がこれにあたります。

また、著作者は生きていても、その著作者自身が、著作権を放棄していたり、または行使しないと宣言していたりする場合もあります。いわゆる「フリー素材」といわれるイラストや音楽などがこれにあたります。ただし「フリー素材」には、著作権自体が存続していますから、どんな利用方法でも認められるわけではありません。

フリー素材のなかには商用利用の禁止や改変の禁止という条件が定められているものも多いです。どういった利用が認められるかは場合によって異なります。

「著作権フリー」とは、無条件に使えるということではないのです。フリー素材を使用する際は、必ず利用条件をチェックしてから使用してください。

2.著作物を適法に引用する

もう一つの著作権違反にならない著作物の使用方法は、適法に引用することです。
他サイトから引用したイラスト・テキスト・SNSの投稿などを自分のホームページ上に掲載する場合、掲載元の管理者・サイトの名称・URLといった出典をきちんと示し、正しい引用方法に従って掲載すれば著作権違反にはなりません。

引用するにあたっては、主従関係をはっきりさせる必要があります。引用をしている側の著作物が主であり、引用されている側の著作物がそれに対して従たる存在であることが必要です。引用といいながら、ただ他の著作物をコピーしているような記事は、適法な引用とはいえません。引用は必要な範囲に限りましょう。

使用する媒体ごとに出典方法もいくつかあるので、その都度正しい出典方法を確認してから使用するようにしてください。

なお、イラストや写真などからトレースして絵を描くといったことも著作物の利用にあたります。著作者の承諾なく利用することは違法になりますので注意してください。人物やキャラクターの場合は肖像権の侵害も問題になります。

3.こんな時に気をつけましょう

  • 自分でホームページを作る際に、イラストや写真などの素材をインターネット検索から探して使用する
  • ホームページに掲載する文章を他のホームページを参考にして執筆する

参考:e-Gov法令検索|著作権法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048

1-2.商標法

商標とは商品やサービスに付される「マーク(識別標識)」です。
具体例としてブランドのロゴマークなどをイメージするとわかりやすいでしょう。

そして商標を独占できる権利のことを商標権といい、商標法はこの商標権の登録や登録商標を守るための法律です。

1.商標権の侵害行為

商標登録されると、その登録商標の指定する範囲で、登録商標を独占的に使用することができます。権利者に無断で登録商標を使い、商品やサービスを販売すると商標権侵害になります。

たとえば登録商標のブランド名を使って自社の商品を販売するといった行為がこれにあたります。

また完全に登録商標と一致していなくても、消費者の誤解を招くような似た表現も商標権の侵害になるおそれがありますので注意しましょう。
商標権を侵害すると、商標権者からその侵害を止めるよう差し止め請求を受けたり、侵害したことで生じた損害賠償請求を受けたりするおそれがあります。

2.商標権と著作権の違い

商標権は自分が作ったものを他人に無断で使用されないという点で著作権と似ていますが、著作権は「著作物」に発生する権利であり、商標権は「商品やサービス」に発生する権利であるという点に違いがあります。
これは著作権が作者の創意工夫やアイディアを守るための権利であるのに対し、商標権は事業者のビジネスを守るための権利だからです。

つまり商標権を得るためには著作権のように創作性は不要で、商標登録さえ受けていれば商標法による保護の対象となります。

著作権は、著作物が創作された時点に発生しますが、商標登録がなければ商標権の保護対象にはならないため、商標権侵害が心配な時はきちんと登録の有無を確認すれば問題ありません。

登録商標は特許庁の運営する特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で確認することができます。

3.こんな時に気をつけましょう

  • 販売しようとした商品と似たような商品が既に存在する場合
  • 取引先の登録商標を自分のホームページで利用する場合

登録商標を使った商品やサービスの販売が商標権侵害にあたるため、ホームページに取引先として会社名やロゴを掲載するのは商標権の侵害にはあたらないと考えられます。
しかし、他社のロゴの使用は商標権以外にも著作権や秘密保持契約に違反する可能性が考えられます。

会社によってはロゴの使用規定が細かく定められているケースもありますので、ホームページでロゴを使用したい場合はその会社に使用許可や利用条件について詳しく確認した方がよいでしょう。

参考:e-Gov法令検索|商標法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=334AC0000000127

1-3.個人情報保護法

個人情報とは、氏名・住所・メールアドレス・クレジットカード番号・顔写真・音声録音など、特定の個人を識別できる情報のことです。
そしてこれらの個人情報が不適切に利用されないよう、正しい取り扱いのルールを定めたのが個人情報保護法です。

最近ではインターネット上での個人情報流出が問題となることも多いため、個人情報を取り扱う事業者にはより一層適切な個人情報の管理・運用が求められています。

1.規制の対象となる事業

個人情報を扱って事業を行えば、個人であっても個人情報取扱事業者として個人情報保護法を守る必要があります。たとえば問い合わせフォームを設置して問い合わせを受け付ける場合や、ホームページを制作してネットショップを運営する場合であっても、個人情報取扱事業者になりますので、注意が必要です。

取得した個人情報は、個人情報保護法に則り適切に管理しなければなりません。

2.規制の内容

実際に気をつけなければならないことについて、主要な点を以下にまとめました。

  • 個人情報を取り扱うときは、利用目的を特定する
  • 本人の同意なく、あらかじめ定めた利用目的以外に個人情報を利用してはいけない
  • 相手を騙すなどの不正な手段で個人情報を取得してはいけない
  • 個人情報を取得した場合、あらかじめその利用目的を公表するか又は本人に通知する
  • あらかじめ本人の同意を得ることなく第三者に個人情報を提供してはいけない
  • 個人情報が漏えい、滅失又はき損しないよう安全管理措置を講じないといけない
  • 個人から情報の訂正、追加又は削除を求められたら応じなければならない

個人情報の利用目的や個人情報の管理体制等について、多くの企業はプライバシーポリシー(個人情報取扱指針)を作成しています。

プライバシーポリシーの作成は法律上の義務ではありませんが、定めることで利用者にも安心感を与えることができます。個人情報を取り扱うのであればプライバシーポリシーの作成を検討するとよいでしょう。

3.こんな時に気をつけましょう

  • ホームページからお問い合わせや予約、見積もり依頼などを受け付ける
  • 商品を販売・発送するサービスをホームページ上で行う

参考:e-Gov法令検索|個人情報の保護に関する法律
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0000000057

個人情報保護委員会|個人情報保護法等
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/

1-4.特定商取引法

特定商取引法は、訪問販売や通信販売など消費者トラブルを生じやすい取引類型において、事業者による悪質な勧誘行為等を防止して消費者の利益を守る法律です。

1.規制の対象となる事業

インターネットによる通信販売は「特定商取引」に該当するため、ネットショップをはじめとしたインターネットビジネスをする場合にはこの法律を守らなければなりません。

2.規制の内容

以下にこの法律で重要な点についてまとめました。

  • 法律に定められた事項の広告表示をしなければならない(販売価格・代金の支払時期と方法・商品の引き渡し時期・事業者の氏名など)
  • 不当な勧誘行為(虚偽の説明や脅迫など)の禁止
  • 誇大広告(実際のものよりはるかに優良な商品と誤認させるような広告)の禁止
  • 消費者があらかじめ承諾しない限り、事業者から電子メール広告を送信してはいけない
  • 契約が解除されたとき、事業者は代金返還を拒否したり遅延したりしてはいけない
  • 顧客の意に反して契約の申込みをさせようとしてはいけない(ワンクリック詐欺など)

ネットショップのような通信販売には、いわゆるクーリングオフ制度はありませんが、特約で決めない限り、商品やサービスを受け取ってから8日以内に購入者の費用負担で返品できるクーリングオフに似た制度があります。

インターネット経由で知り合ったとしても、相手の自宅に訪問して契約書の締結を行った場合には「訪問販売」に該当すると考えられますし、エステティックや美容医療、語学教室などは特定商取引法上「特定継続的役務」に該当します。

それぞれ通信販売とは異なるルールが定められており、インターネットを経由した取引であっても、通信販売と異なるルールが適用されることもありますので、ご注意ください。

申込や返品特約の表示については、消費者庁がガイドラインを出していますので、参考にするとよいでしょう
消費者庁|令和3年特定商取引法・預託法の改正について)。

3.こんな時に気をつけましょう

  • ホームページ上で商品やサービスを販売する
  • 有料の情報配信サービスを行う

特定商取引法ガイド(消費者庁)|インターネットで通信販売を行う場合のルール
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/mailorder/rule.html

1-5.薬機法

薬機法(正式名称:医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)は医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(以下「医薬品等」といいます)を取り扱う場合に規制の対象となる法律です。

薬機法は医薬品等の品質、有効性及び安全性の確保などを定めた法律で、人の生命や身体にかかわる法律なので通常の商品などに比べると規制が厳しく、その規制内容は法律や当局が定めるガイドライン等にかなり細かく定められています。
そのためもし薬機法の規制対象となる商品を扱う場合、少しでも迷ったらその都度法律や当局が定めるガイドライン等を確認してください。

なお、健康食品など薬機法の対象とならない場合でも、健康増進法、景品表示法、食品表示法などの法律が適用されますので、関連する法律や当局が定めるガイドライン等をチェックするようにしてください。

1.規制の対象となる事業

医薬品等の製造をする業者やインターネット通販などで上記にあげたものを商品として取り扱う事業者が規制対象です。
また商品を実際に販売する広告主だけでなく、商品の広告を掲載する広告代理店やアフィリエイターなども規制対象に含まれます。

そのためアフィリエイト目的でホームページを制作して商品の広告を掲載した場合なども規制の対象となるので、この点は注意してください。

2.規制の内容(主に広告について)

広告の規制としては、誇大広告・虚偽広告、承認前の医薬品等の広告、医薬関係者等の推せんなどの広告の禁止などが挙げられます。

たとえば医薬品の場合「何でも効く」「~が治る」という謳い文句は誇大広告に、「〇〇先生のお墨付き」といった表現は医薬関係者等の推せんにあたり、いずれも禁止される表現です。「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」を参考にしてください。

医薬品以外にも商材別に要件が定められています。たとえば、化粧品の場合には効能効果の範囲があらかじめ「化粧品の効能の範囲の改正について」に定められていて、明記されたもの以外の表現は禁止されています。

医薬品等や健康食品にかかわる法律はインターネット関連の法律のなかでも特に複雑なので、対象商品を取り扱う場合には商材ごとのルールを自分でもよく調べ、最新の厚生労働省、消費者庁などの資料にもきちんと目を通すようにしましょう。法令や基準などは折に触れ変更になることがありますので注意してください。

3.こんな時に気をつけましょう

  • 化粧品:効果効能について標ぼう可能な表現が限られています
  • 健康食品:あくまで食品であるため、薬機法で規制される領域に入り込むような表現は認められません(医薬品のような効能を標ぼうまたは暗示した表現など)

参考:e-Gov法令検索|薬機法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=335AC0000000145

日本化粧品工業連合会|化粧品等の適正広告ガイドライン
https://www.jcia.org/user/business/advertising/

消費者庁|食品表示法等(法令及び一元化情報)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_labeling_act/

消費者庁|健康増進法(誇大表示の禁止)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/extravagant_advertisement/


02法律に違反するとどうなる?

法律違反に対して与えられるペナルティには、大きく分けて「刑事罰」「行政上の責任」「民事上の責任」の3種類があります。

刑事罰は懲役・禁固・罰金といった犯罪に科される罰則のことで、行政上の責任とは課徴金や免許の取消などを指し、民事上の責任とは損害賠償をはじめとした被害者に対する責任を指します。

それぞれどのようなペナルティがあるのか、具体例を挙げて説明します。

法律に違反するとどうなる?

2-1.刑事罰

刑罰の内容は各法律に定められており、たとえば著作権法や商標権法には「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」、個人情報保護法には「2年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金」という規定があります。

同じ法律違反でも違反の内容によって科される刑罰が違い、罪が重いほど罰則も厳しくなります。

2-2.行政上の責任

医薬品等の誇大広告を行った場合には、薬機法に基づき課徴金が課せられることになっています。課徴金は、刑罰ではありません。ただその金額は、誇大広告の場合は誇大広告によって得た対価の4.5%とされるなど、内容によっては大きな額になる可能性があります。

また、法令に抵触した場合には、当局から許認可が取り消されたり、違反した事実が公表されたりするなどの対応が取られる場合もあり、これらも行政上の責任といえます。

2-3.民事上の責任

民事上の責任にはさまざまな種類があります。
たとえば著作権違反の場合、相手方から受ける請求として以下のようなものが考えられるでしょう。

  • 差止請求(侵害行為の停止・予防)
  • 損害賠償請求(侵害行為によって受けた損害の賠償)
  • 不当利得返還請求(法律上の原因なくして得た利益の返還)
  • 名誉回復等の措置請求(謝罪広告等の侵害された名誉を回復する措置)

その他にも特定商取引法違反であれば契約の取り消し、個人情報保護法違反では個人情報の利用停止請求などがあります。

具体的にどのような民事上の責任を負うかは、その責任追及を求める当事者の選択によります。法律で保護される権利の性質や当事者の関係によって、民事上の責任には、さまざまな形があります。


03まとめ

今回はホームページ作成をする上で最低限押さえておきたい法律の知識についてご紹介しました。
どれも「知らなかった」では済まされない大切な知識ですので、本記事でご紹介した内容をよく理解し、しっかりルールを守ることが大切です。

法律に違反すると刑罰が科される可能性もあり、違反の内容によっては懲役刑など非常に重い罰則もあるので十分注意してください。

法律を理解してきちんとルールに従い、正しくインターネットを活用しましょう。

― この記事を監修した人 ―

大江 弘之

弁護士 大江 弘之
奥・片山・佐藤法律事務所 所属

株主総会指導などの上場企業法務、企業法務全般及び破産管財人等を手掛ける。個人の相談(離婚、相続等)、刑事も対応。

主要な著作は、『Q&A 令和元年 改正会社法』(共著、新日本法規出版)、『書式 会社訴訟の実務 訴訟・仮処分の申立ての書式と理論』(共著、民事法研究会)、『実務にすぐ役立つ 改正債権法・相続法コンパクトガイド』(共著、ぎょうせい)等及び『若手弁護士・パラリーガル必携 委任状書式百選』(共著、新日本法規出版)。



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